「DMMは何故、シント・トロイデンを買収したのか?」村中会長が答える 今夏、日本人選手が次々と移籍
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今夏、日本人選手が次々と移籍し、話題を呼んだベルギーリーグ。なかでも注目を集めるのは、日本人選手が5名在籍するシント=トロイデンVV。
日本企業の「DMM.com」はなぜ、このクラブを買収したのか? 同社取締役でもある村中悠介会長に聞いた。
■外国人枠がほぼないのは大きい
「DMM.com」は2017年6月にシント=トロイデンVV(以下、STVV)の株式の約20%を取得。同年12月には約99・9%まで保有率を高め、クラブ経営をスタートさせた。
──まず、DMMがSTVVを買収した経緯を教えてください。
村中 昨季までFC東京でGMをされていて、今はSTVVのCEOである立石(敬之)さんを知人に紹介されたのが始まりでした。ベルギーのいくつかのクラブが候補に挙がり、実際に交渉したのは3クラブでした。
われわれがやる以上は、単にクラブをスポンサードして広告で露出を増やし、知名度アップを狙うということではなく、サッカークラブを経営して、売り上げも利益も上げていこうという方針だったので、話は簡単に進みませんでした。
株を買い進めるにあたっても、「49%までならいいよ」とか……。実際、向こうにとって、突然現れた外国企業に愛する自クラブを売るっていうのはなかなかの決断ですから。
──STVVを買収する上で、どのような魅力を感じられたのですか。失礼を承知で言えば、STVVはベルギーの一地方クラブにすぎません。
村中 私も最初に「シント=トロイデン」と聞いたときは、名前も聞いたことがなければ、場所がどこなのかもわからなかったです。何しろ人口4万人の小さな街ですから(苦笑)。ただ、街の大きさに関係なく、欧州サッカーって、どこまで行っても上があるじゃないですか。そこに面白さを感じましたね。
それに調べていくと、ベルギーリーグは欧州リーグのレベルを示す「UEFAランキング」で、これまで日本人選手が欧州へ移籍する際の登竜門的な役割を果たしていたオランダリーグよりも上でした(編集部注:オランダリーグの14位に対し、ベルギーリーグは9位)。
それと、STVVには若い選手が多く、多国籍でこれから伸びそうな気配を感じたんです。
また、日本人選手の獲得も視野に入れていたので、ベルギーがEU外選手を登録しやすいリーグだったことも魅力的でした(編集部注:スペインやイタリア、フランスのクラブなら基本的にEU外選手の登録は3人まで。英プレミアリーグにしても外国人枠に制限はないが、労働許可証の取得は容易ではない。その点、ベルギーは最低6人の自国育成[ホームグロウン]選手のベンチ入りが義務づけられている程度。たとえ外国籍でも、若手選手は3年で自国育成と見なされる)。
つづく
10/10(水) 6:01配信 週プレニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181010-01072490-playboyz-socc
村中 そうなんです。それにEU外選手の最低年俸はオランダに比べても格安ですから(編集部注:オランダ1部リーグが約5500万円なのに対し、ベルギー1部は約1000万円とされる)。
外資でやる以上は、外国人枠がほぼないのは大きいですし、例えば、ベルギーはオランダ語とフランス語が公用語ですが、STVVはチーム内外で基本的に英語が通じるというのも大きなメリットでした。
■日本人ばかりにするつもりはない
近年ベルギーといえば代表チームの躍進も目覚ましいが、ロシアW杯で3位に輝いたメンバー23人のうち国内リーグでプレーしていたのはただひとり。
かつては、エデン・アザール(チェルシー)もケヴィン・デ・ブライネ(マンチェスター・C)もロメル・ルカク(マンチェスター・U)も母国ベルギーのクラブでキャリアをスタートさせたが、頭角を現すと、より資金があり、レベルの高い隣国のリーグへステップアップしていった。
また、アフリカや東欧からベルギーに活躍の場を求めて流れ着き、そこからイングランドやスペイン、ドイツに渡るケースも少なくない。選手を安く買って、活躍次第で隣国のビッグクラブに高値で売る。これはある意味、ベルギーのクラブ経営の王道である。
──経営の柱は、やはり若い選手を育てて売ることになってくるのでしょうか。
村中 もちろん、それもひとつです。ベルギーリーグは若い選手を取りやすい状況にありますし、獲得した選手がそこからステップアップすることが選手にとってもいいことですから。
ただそればかりでなく、同時にチーム力を底上げして、リーグで上位をキープすることが財政面の安定につながると考えています。だからこそ、プレーオフ1に進出できる「リーグ6位以内」を3年以内に目指したいと言っているんです。
選手を売るにしても、仮に実力が一緒でも、下位クラブよりは上位クラブのほうがバリューもつきますし、順位が上がれば入場料収入もそれに比例して上がるはず。
プレーオフ1はもちろん、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場できれば、放映権の収入も大きく増えます。そういった意味では、すべてが連動してくるんです。
つづく
村中 ここからはさすがに増えないんじゃないですか(笑)。もちろん、今後誰かがステップアップしたら、わからないですが……。
クラブとしては若い才能ある選手のステップアップの場、欧州進出の拠点になればと思っていますが、STVVを日本人選手ばかりのチームにするつもりはありません。国籍にこだわらず、あくまで若くて優秀な才能にチャンスの場を与えたいと考えています。
──「日本サッカー欧州拠点化プロジェクト」という方針も掲げているようですね。
村中 日本サッカーがさらに発展していくためには、選手も指導者も欧州に行くのが近道だと思うんですが、現実はそこまで簡単にはいかない。例えば、英語ができないまま海外に行っても苦労するじゃないですか。
ただ、STVVなら日本人スタッフも現地に滞在していますし、彼らのサポートを受けながら海外の環境に慣れることができる。英会話にしても、ウチなら「DMM英会話」がありますし(笑)。選手だけでなく、指導者にとってもSTVVが欧州進出の第一歩になればという想いがあるんです。
ただ、これはあくまで日本向けの話で、現地でこうした話をしているわけではありません。そのへんは地元ファンやプロパーのベルギースタッフの想いも尊重しながら、うまくマネジメントしていければと思っています。
■「トップ6」に入れば、”好循環”が生まれる
村中会長は3年以内に6位以内を目指し、リーグ優勝や欧州のカップ戦出場をかけたプレーオフ1に進出することを目指したいと語る。だが、STVVの過去3年の順位を振り返れば10位、12位、13位と低迷しており、その道は容易ではないともいえる。
つづく
村中 そうした声も理解はしています。ただ、信じるところから入らないとできるものもできないじゃないですか。ある現地メディアには「日本人はすぐに飽きて、じきに撤退する」なんて書かれましたが、そうした声が出るのもある種の宿命と思っています。
──ベルギーの中・下位クラブの年間予算の相場はJ2クラブと大差のない、約15億円ほど。もしSTVVが欧州カップ戦に出られたら、ものすごく夢があると思います。
村中 (予算は)もうちょっとありますけどね。もちろん、同程度の予算で「トップ6を狙う!」と言うだけでは説得力はありません。アンデルレヒトやブルージュなどのトップクラブは、上位に入って欧州カップ戦に出て、放映権も手にし、その資金で補強する、といういいスパイラルに入っています。STVVもまずは一回でもそこに行かないと。そうすることで、チームを強化できると思います。
──10年後、クラブはこうありたいという目標はありますか?
村中 チャンピオンズリーグじゃないですか! 10年以内に一回は出たいですね。
──ちなみに最近はIT企業のスポーツ界への参入がはやっていますが、今後は日本でクラブを持つなどの考えはないのですか?
村中 実はSTVVの買収も、社内のごく一部で進めていた話で、多くの社員は発表があるまで知らなかったんです。そうしたこともあって、最近はDMMの社員から「野球チームを買う予定はないですか?」と聞かれることもあるんですが、私に言われてもなんとも。そういうお話はDMM会長までお願いします(笑)。
●村中悠介(むらなか・ゆうすけ)シントトロイデン会長兼DMM.com取締役。合同会社DMM.comCOO、株式会社STVV NV(運営会社)会長。2002年にDMM.comグループに入社し、2011年に取締役就任。数多くの事業を立ち上げる。管轄サービスは20を超え、その売り上げはDMM.com全売り上げの半数近くにも上る
取材・文/栗原正夫 撮影/山上徳幸
Source: カルチョまとめブログ